2013年3月16日土曜日

梯子


どうも、お人好しが過ぎたらしい。

何度梯子を外されても、その度に自力で降りるか、居直って更に高みに挑んできたが、まさか、今度は昇らせた屋根まで壊しにかかられるとは。辛うじて梁(はり)にしがみついてはいるが、次に棟木まで倒されたら、もうひとたまりもない。何も好き好んで昇った梯子ではない。昇れと命じられれば従うのが組織の理だからだ。豚ならおだてればホイホイ昇るだろうが、こちとら強要のもとに昇らされている。梯子を外されるのは、出鼻から分かっているのだ。だからこそ、梯子を外された後のことを考えつつ、嫌々足場を踏んでいく。梯子ごとなぎ倒される不安とともに。

とどの詰まりは、彼奴らが、彼奴ら以外の誰かを落として、彼奴らが安泰を得たいがために、利用していただけなのだ。これでは、炒られて踊る豆よりも惨めじゃないか。
不思議と怒りは感じない。憐れみすら憶えない。害を及ぼす相手に対して、強い拒絶の感情を抱くのは、罪深い人間の本能だとは思うのだが、それもない。

淡々と消したい。手段は問わない。情状酌量だなんてとんでもない。身体を巡る血の熱が、次第に冷たくなっていく。

冬よりも、凍てつき、渇いた春を届けよう。硬い氷ほど、無慈悲で恐ろしいものはないのだ。